文化と居酒屋の関係

本来的な価値

居酒屋は日本だけでなく、外国においても文化交流の場所として大きな役割を果たしてきました。
「居酒屋」というタイトルは日本において歌謡曲や映画のタイトルなどにもよく見かけます。古くは1877年に発表されたフランスの作家エーミール・ゾラの小説で有名になったタイトルです。
ゾラが「居酒屋」で描いたのは労働者階級の群像劇で、普通小説で見られるような痛快な正義漢による討伐劇や切ないロマンスなどとは無縁なものでした。
ゾラの居酒屋が発表された当時には、フランスにおいても評判大きく分かれており、本来的な価値が認められるようになるまでやや時間がかかりました。

ゾラの影響があるためかもしれませんが、そのあとの文学や芸術作品における「居酒屋」のイメージには、庶民的、労働者的、大衆的といった意味が背景として含まれるようになっているようです。

日本における文学作品

さて日本における文学作品についてですが、お酒と特にかかわりが深いとされている代表的な作家が若山牧水です。
旅を愛し、全国各地をめぐってすぐれた詩歌を残した牧水。大の酒好きであることが有名で一日一升程度は飲んでいたという話も残されています。なお死因は当然とも言えるかもしれませんが肝硬変によるものでした。
お酒をたたえる歌も数多く残しています。代表的なものとして2つ紹介しましょう。
1つ目が、「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」
2つ目が、「居酒屋の榾木のけむり出でてゆく軒端に冬の山晴れて見ゆ」
このような名句を残すほどお酒を愛して飲んだと言われています。
居酒屋について読んだ二番目の句などは、居酒屋の軒先から見える景色について繊細に描いた素敵な風景です。

つい50年ほど前からは新宿には「ゴールデン街」という多くの文化人を生み出してきた町並みもあります。
そこでの居酒屋では現在よりももっと庶民的な語らいがされてきたことでしょう。
ちなみに今もこのゴールデン街は営業を続けており、全盛期からある老舗のお店だけでなくニューウェーブとして登場してきた新しいお店など全部で200軒ほどのお店が看板を並べています。
ゴールデン街は終戦間もない昭和20年に新宿駅近くに作られた闇市が発祥と言われます。
日本における居酒屋文化が花咲くようになったのは、この新宿ゴールデン街から出ていった多くの文化人の力によるところも大きいことでしょう。
今も多くの演劇やマスコミ関係者が訪れる庶民的な場所として、ゴールデン街は文化と歴史の中心であり続けています。